2019年10月1日、三井住友フィナンシャルグループにより開設されたイノベーション拠点「hoops link tokyo」にて、給与即日支払いサービス「Payme」を提供する株式会社ペイミーの主催により、「New Career – 大企業からベンチャー転身へのリアル」が開催された。本イベントは、ベンチャー企業への将来的な転職に関心があるビジネスパーソンを対象として、スタートアップで活躍している各社の『起業家の右腕』の方々による実体験に基づいたトークセッションを通じて、ベンチャー企業で働くことの「リアル」を伝えることを目的としている。本稿では、その概要を講演レポートとしてお届けする(撮影:多田圭佑)。
参考:転職サイト おすすめ
目次
大企業からスタートアップへの新しいキャリア形成論
パネルディスカッションの前に、株式会社サイバーエージェント 社長室 投資戦略本部(藤田ファンド)に在籍し、2019年7月から株式会社ペイミー に戦略人事担当として出向中の坡山里帆氏(以下、坡山氏)から「大企業からスタートアップへ 新しいキャリア形成論」と題するプレゼンテーションが行われた。
坡山氏からは、「成長産業について」「米国と日本の転職市場のトレンド」「大企業出身の起業家/No.2」「本日のイベントについて」が伝えられた。その後、スタートアップの現場で活躍するビジネスパーソンの「リアル」を共有すべく、株式会社ペイミーにて人事責任者を務める阿久澤栄里子氏(以下、阿久澤氏)が司会を務める形で、約60分間にわたるパネルディスカッションが実施された。登壇者は『起業家の右腕』としてスタートアップで活躍中の4名のビジネスパーソン。プロフィールについては以下の通り。
【登壇者プロフィール】
伊藤 祐一郎 (イトウ ユウイチロウ)氏
株式会社Finatextホールディングス 取締役CFO
東京大学経済学部卒業。2010年よりUBS投資銀行本部において、IPOやグローバルM&Aに従事。2016年8月より現職。
李 信愛 (イ シネ)氏
株式会社justInCase COO
東京大学経済学部卒。AIG損害保険株式会社にて企業賠償・企業財物の損害査定人、デジタルトランスフォーメーションのプロジェクトマネジャーを経て2019年3月から現職。韓国ソウル出身。
東後 澄人 (トウゴ スミト)氏
freee株式会社 取締役CFO
子午線の街、兵庫県明石市出身。東京大学工学部卒。同大学院ではJAXAの研究室に所属。McKinsey、Googleでの経験を経て、2013年からfreeeに参画。趣味は卓球・ドライブ・ドラクエⅢ。
関 悠樹 (セキ ユウキ)氏
株式会社ペイミー 財務担当
東京大学法学部卒業。2015年より株式会社野村総合研究所にて経営コンサルティングに従事。その後レオス・キャピタルワークス株式会社にて上場準備およびバックオフィス改善、人事制度刷新等に従事。2019年当社入社。2019年7月より現職。当社では主に財務を担当。
同期の「成長」にメチャクチャ焦った
冒頭に本イベントの趣旨について阿久澤氏から簡単な説明が行われ、その後、パネルディスカッションが開始された(以下、敬称略)。
阿久澤:皆さん、本日は宜しくお願い致します。早速、最初の質問から始めたいと思いますが、まずは、「転職を考えたきっかけと現在の会社を選択した理由」に関して、皆さんにお伺いしたいと思います。伊藤さん、いかがですか?
伊藤:そうですね。一言で言うと、「メチャクチャ焦った」んですよね。どういうことかというと、当時、新卒で入社したUBS証券時代の同期と一年ぶりくらいに飲む機会があったんですけど、その彼が凄まじい成長を遂げていて、まるで「別人」になっていたんです。取り組んでいることの質・量ともに自分のそれとはまったく違う次元に達していて、仕事に取り組む上での「熱量」も段違い。「こんなに違うのか」というほど凄まじい差を感じました。彼の圧倒的な成長に焦りを感じて、その日のうちに会社を辞めることを決心しました。あまりにもセンセーショナルな体験でした。狂っているほど凄いヤツになっていたんです。
自分の仕事を通じてどれだけ社会にインパクトを与えられるか
阿久澤:なるほど。有難う御座います。他の方にもお話を聞いてみようと思います。それでは、李さん、お願いします。
李:自分の仕事がどれだけ社会にインパクトを与えることができるのかということを考えた時に、どうしても当時の自分に出来ることに限界を感じてしまったんです。前職を「辞めよう」と思ったのはそのタイミングですね。
阿久澤:やっぱり、その時は、上司の方から「引き止め」などがあったんですか?
李:そうですね、有難いことに、前職の上司はかなり親身になって相談に乗ってくれる人で、私の場合、有給休暇がなんと76営業日分も残っていたのですが、それを全部消化させてくれるような途轍もなく寛大な上司でした。その上司に退職する意向を伝えた時、凄まじい勢いで「ストップ」をかけられまして。ちょうどその時、昇給が決まったタイミングだったこともあって、「なぜ辞めるのか」「どこに行くのか」と矢継ぎ早に聞かれましたね。「辞めるんだったら、俺が認めた会社じゃないと許さん」的な感じで(笑)
阿久澤:「俺が認めた男じゃないと嫁にはやれない!」みたいな感じですか?
李:そんな感じです。
阿久澤:今の会社に決めた理由は?
李:保険業界でまだやり残していることがあると感じていて、当時は大企業でデジタルトランスフォメーションを推進することに「挫折」したタイミングだったので、ゼロから色々と出来るところを探していました。すると、代表の畑に「うちでCEO見習いしてみませんか?」と誘われて、「やっとチャンスが来た!」と思って即決しました。その後、オフィスに行って、Slackのグループに入れてもらって、そのままスムーズに入社に至ったという感じですね。
Googleは素晴らしい会社。転職は考えていなかった
阿久澤:なるほど、有難う御座います。それでは、東後さん、お願いします。
東後:私の場合、正直、まったく転職は考えていませんでした。前職のGoogleは素晴らしい会社で、特に辞める理由もなく、非常に恵まれた環境で仕事をしていました。弊社代表の佐々木もGoogle出身で、長年、隣で一緒に仕事をしていました。彼が先に辞めて、その抜けた穴を私が埋めていた格好だったんですが、その後、私も転職ということで、Googleの同僚には迷惑をかけてしまった部分もあったかと思います。freee株式会社に参画した理由ですが、佐々木とディスカッションをする中で、「このサービスは世の中を間違いなく大きく変えていく」と感じたんですね。実際にプロダクトとして創出できる価値はきわめて大きいのではないかと感じて、気づいたら入社していました。
阿久澤:代表の佐々木さんが「ウチに来てよ」と熱く引き込む形で東後さんを口説き続けた結果、入社に至ったのですか?
東後氏:それが必ずしもそうではないんです。我々が提供している「クラウド会計ソフトfreee」がリリースされた日が2013年3月19日なのですが、3月19日が私の誕生日でして、そのタイミングで、「私の誕生日にプロダクトをリリースするなんてなかなかセンスいいじゃないですか」とメッセージを送ったんです。すると、佐々木から「久しぶりにキャッチアップしようか」という話になりまして、それが最初のきっかけですね。
阿久澤:そこから具体的に転職に向けた話が始まったんですか?
東後:そうですね。その後、佐々木と何度かディスカッションを行いました。誘ってきた佐々木も「さすがに転職してこないだろう」と思っていたらしいのですが、「ダメ元」で誘ってみたら、意外に私が「乗り気」だったという。本当に何がきっかけになるのかわからないものです。また、繰り返しになりますが、前職のGoogleという会社に不満はありませんでした。優秀な人が非常に多く、ワークライフバランスも実現できる素晴らしい環境でした。しかし、その一方で、「自分が思い描く成長曲線を考えた時、今の立場に安住していて本当に大丈夫なのだろうか」という一抹の不安があったこともまた事実です。
阿久澤:有難う御座います。では、関さん、お願いします。
関:大学時代にインドネシアでインターンをしていた関係で、元々、ペイミー社長の後藤と知り合いではありました。彼がDeNAに入社して以降、折に触れて色々と近況報告をしてくれていたのですが、当時は、仮に入社したとしても、自分の能力をどのように役立てれば良いのか見当がつかなかったんですね。ただ、私も前職で色々と経験を積んできた中で、「自分にも何かできることがあるのではないか」と思うことが徐々に増えてきたんです。その後、ちょうど資金調達を行い、「これからペイミーを拡大していくぞ」となったフェーズで、「このタイミングなら自分にもやれることがあるんじゃないか」と考えるようになりました。そして、これまでずっと誘ってくれていた後藤の誘いを受ける形で、株式会社ペイミーに参画することを決心しました。ちなみに、前職のレオス・キャピタルワークスは素晴らしい会社で、最近では特に優秀な人材がどんどん入社してきています。「レオスが嫌だから辞めた」ということはまったくないですね。
ビジョナリーな「非常識人」である起業家を支える
阿久澤:有難う御座います。皆さんのバックグラウンドがわかったタイミングで、今回、『起業家の右腕』というテーマにフォーカスを当てていることを踏まえ、「右腕」としての役割や社長との役割分担について伺いたいと思います。伊藤さん、いかがですか?
伊藤:「右腕」としての役割ですが、社長のキャラクター次第で変わると思っています。おそらく、パターンとしては、「営業系」の人なのか「エンジニア系」の人なのか「戦略系」の人なのかで分かれると思っています。弊社代表の林に関して言えば、間違いなく「営業系」の人で、その面においては、国内スタートアップCEOの中でトップクラス。冗談抜きで「天才」だと思っています。また、役割分担についてですが、自分が取り組んでいる業務は非常に幅広いですが、右腕の役割として最も重要だと思っているのは、CEOが思い描く3〜5年後の大きなビジョンを実現するための具体的な筋道を作ることだと思っています。例えば、「3年後にこうなっていたい」という目標に対して、「3ヶ月後にどうなっている必要があるか」を考えながら、課題をつくる。それらをきちんと分解しつつ、分解されたタスクをチームのメンバーにどんどん「パス」していく。
阿久澤:課題を作るというのは、理想と現実のギャップを分解して具体化していくということですか?
伊藤:そうですね。忙しい中でそれらを実行していくのは大変難しい作業ですが、非常に重要な役割だと考えています。
阿久澤:有難う御座います。それでは、もう一名、伺いたいと思います。東後さん、いかがですか?
東後:『起業家の右腕』として求められる要件は、フェーズによってまったく変わると思います。定義するのは難しいし、伊藤さんがおっしゃったように、社長次第で変わる面もありますが、共通して言えることは、二つあると思っています。一つ目は、CEOが実現したいと思っている世界観を具体的なイメージに落とし込むこと。二つ目は、先程の伊藤さんのお話とも重なりますが、決まった具体的な目標に向けて誰よりも率先して先頭に立って取り組んでいく。その実行を担うことが大切なのだと思います。
阿久澤:なるほど。今のお話に関連してお伺いしたいのですが、「ビジョンがあって、勝ち筋があって、段取りができるのであれば、自分で全部できるのでは?ナンバーワンになったらいいのでは?」という考え方もあると思うのですが、「右腕だからこそやりがいを感じる」等、そういった側面もあるのですか?
伊藤:それで言うと、トップになる人は「神のように飛び抜けた能力」が一つ必要なんですね。凄く突出したものがないといけない訳ですが、正直、僕にはそれがないです。特に、今回の登壇者のメンバーは金融関連の事業に取り組んでいる方々ばかりですが、金融分野で勝つのは本当に難しくて、「無茶な飛躍」を何回か乗り越えなければならない。常識的な取り組みをしているだけでは絶対に無理で、飛び抜けたところまで到達するには、「特殊能力」でチーティングしないと無理だと思っています。
阿久澤:なるほど。林さんの「特殊能力」ってなんですか?
伊藤:彼が圧倒的に強いのが、論理を超えて人の心を動かすことができる点です。狙った人にキチンと仲間になってもらうことができるんです。そのために何が重要かと言うと、「人を好きになる能力」だと思うんですね。人に好きになってもらうためには、その人を先に死ぬほど好きになることが必要なんです。弊社代表の林はその能力が突出していると感じています。
阿久澤:有難う御座います。素晴らしい役割分担だと思います。東後さんはいかがですか?
東後:一言で言うと、「常識人」か「非常識人」かという話だと思っています。私の場合、どこまでいっても「常識人」で、常識の範囲内で物事を捉えてしまう。一方、スタートアップの経営者として大成功する方はどちらかというとある種の「非常識さ」を持っている場合が多い。弊社代表の佐々木も「普通」であることをとにかく嫌がるし、常識をとことん疑う人なんですね。ある種の「非常識」な感覚を持っていることが重要なのだと思います。その意味で、「非常識」な感覚を持ち合わせていない私が佐々木の代わりにナンバーワンになりたいとは思いませんし、なれるとも思いません。
大企業とスタートアップ。それぞれで働くこと
阿久澤:有難う御座います。それでは、次の質問に移りたいと思います。皆さん、大企業とベンチャーの両方を経験されていますが、それぞれの働き方についてメリット・デメリットを伺いたいと思います。では、関さんからお願いします。
関:大企業の良い点は、自分の得意領域を伸ばせる点ですね。ベンチャーの場合、基本的に人手が足りないので、自分で全部やらないといけない。大企業の場合、リソースが豊富にあるので、やりたいことに特化できるのは良いと思います。逆に、ベンチャーは何が良いのかというと、やれば確実に「成果」としてリターンが返ってくる点ですね。
李:大企業のメリットは、誤解を恐れずに言えば、何も心配しなくても給料がもらえて、何も心配しなくても職位が一定レベルまでは上がる点だと思います。また、常に取り組むべき課題があって、やるべきことがある。これも大企業のメリットだと思います。その反面、自分が取り組んでいることが社会に対してどのような意味があるのかがわかりにくくなる場合がある。これはデメリットになり得ると考えています。
阿久澤:なるほど。逆に、ベンチャーの場合はどうですか?
李:ベンチャーの場合だと、「なんでもできる」ことがメリットであり、デメリットでもあると思いますね。
スタートアップに優秀な人材が集まってきている
阿久澤:有難う御座います。私が学生さんから良く受ける質問で、「最初は大企業に入っておいた方が良いですかね」とか「いきなりスタートアップでゴリゴリと鍛えられた方が良いですかね」といった「順番論」があるのですが、このあたりについて、皆さんのご意見はいかがですか?
東後:15年前と今では全然違うと思いますね。15年前であれば、スタートアップに優秀な人はもちろんいたとは思いますが、割合としてはそこまで多くはなかったと思うんですね。やはり優秀な人は大企業に集まっていた。しかし、特にここ最近の5年くらいで、スタートアップに本当に優秀な人材が集結してきていることを強く感じます。なので、新卒でもスタートアップに飛び込む方がむしろ成長のチャンスがあるのではないかと個人的には考えています。時代によって、どの環境が自分を成長させてくれるのかをしっかりと見極めることが大切だと思います。
この会社は何が優れているのかを考えて吸収する
阿久澤:今、仕事を進めている中で、大企業で身につけておいて良かったなと感じる能力は具体的に何がありますか?
李:プロジェクトの回し方ですね。プロジェクトを推進するために必要な「型」を覚えたことは、現在の仕事でも非常に役立っていると感じます。
阿久澤:有難う御座います。皆さん、他にありますか?では、関さん、お願いします。
関:組織設計の仕組みですかね。そのあたりについては、大企業から取り入れるべき部分は非常に多いなと思います。ベンチャーはどうしても手探りで様々な業務が属人化しやすい面がある。あらゆる業務において、「仕組み化」が出来ていることについては、大企業の強みなのかなと思います。
阿久澤:有難う御座います。では、スタートアップの良いところについて、伊藤さん、いかがですか?
伊藤:スタートアップの場合、新しいことをやっているので、当然、サービスの差別化はされているんですね。それゆえ、「変な営業」や「変なマーケティング」をあまりする必要がない点はメリットの一つとして実はあると思っています。これはどういうことかと言うと、例えば、M&AとかIPOのアドバイザリー業務って、競合他社に対する差別化ってなかなか難しくて、いわば強引に差別化を図るためにとんでもなく分厚い資料を作ったりすることがあるんですね。そういった「変な作業」がスタートアップの場合はかなり少ない。自分が真に取り組むべきだと思っていることに十分な時間を割くことができるのはスタートアップの良さなのかもしれません。
東後:大企業って基本的には良い会社のはずなんですよ。良い会社じゃないと、大企業になれないから。そこに所属しているということは、何かしら盗めるものがあるはずなんです。なので、「この会社は何が優れているから大企業になり得ているのか」ということをしっかり考えて、その上で、出来るだけ多くのことを吸収する姿勢が大事かなと思います。そして、吸収したものをベースにして、将来的には、スタートアップで組織を作っていって欲しいなと思います。大企業で漫然と過ごすのではなく、全力で吸収する勢いで日々の仕事に取り組むことが重要かと思います。
阿久澤:確かに、離れてみて大企業の良さがわかるというか、辞めた後に、「もっと吸収しておけば良かった」と思ったりすることも多いですよね。それでは、ここで会場からいくつか質問を受け付けたいと思います。
ー トップとの関係性を維持する上で気をつけていることを教えてください。
東後:ぶつかりあうことを恐れてはいけないと思っています。自分の視点から見て、「こうなのではないか」ということは主張するべきだと思います。ただ、代表が本気で「こうしたい」と思っている場合は、彼の想いを尊重して、全力でサポートしたいなと思っていますし、それが自分のミッションだと思っています。
伊藤:弊社の場合、社長がかなり気を遣ってくれていて、正直、僕は何も気を遣っていないです。お互いの強みについては、完全に理解しあっているつもりですね。加えて、もう一つ言いたいのは、ウチの社長が凄いのは、プライドがないことなんですね。それって凄く大事なことで、特に男性経営者の場合、失敗するのはプライドが原因であることがほとんどだと思います。そのあたりの感覚については、僕もかなり見習っていて、凄く意識しています。
ー 大企業での優秀の定義とスタートアップでの優秀の定義は異なると思っています。優秀な人材をどのように見極めているのか教えてください。
関:私が言うのもおこがましい話なのですが、スタートアップにおいては、「突撃できる人」って優秀だと思います。例えば、成果を出す上で、「テレアポ100件かけられるヤツって偉いよね」という話です。「このテレアポ、効率悪くないですか?」とか言って、100件かけられずに成果が出ないよりは、少しくらい効率が悪くても、淡々とテレアポを100件かけて成果を出せることの方が重要だと思っています。それがちゃんとできるかについては、面接で聞いたりします。あとは、仮説を外した時にすぐに修正できるかどうかも重要ですね。
阿久澤:なるほど。伊藤さんが先程おっしゃった「プライドを捨てる」にも通じるところがありますね。
東後:時期によって変わるのですが、共通して言えるのは、「知的好奇心」の重要性ですね。スタートアップは想定していないことが日常茶飯事的に起きる。新しい環境でどれだけ常に好奇心を持ってやれるか、面白いと思ってやれるか、その重要性はどのフェーズにおいても変わらない。また、時期別で言うと、最初のフェーズでは、「何でもできる人」が比較的重宝される場合が多いですが、現在の弊社のフェーズであれば、経営企画の経験等を積んだ人が特に求められています。
李:まさにおっしゃる通りで、フェーズによって求められる能力は違いますし、弊社やペイミーさんのようなアーリーステージのスタートアップであれば、いわば「突撃する能力」や「自走して営業できる能力」が特に重要なのだと思います。
阿久澤:「自分のやりたいこと」と「自分の特性」と「会社のフェーズ」。これらをキチンと見極めることが大切ですね。有難う御座います。
ー 社長と揉めたこと。直して欲しいこと。会場の方々へのアドバイスをお願いします。
伊藤:揉めたことはないですね。直して欲しいことも特にないです。アドバイスですが、僕自身、そこまでやりたいことが明確にあった訳ではないんです。ベンチャー転職を考える場合、「やりたいことが見つかったら転職する」という方が多いんですけど、僕は「やりたいこととかビジョンとか必ずしも無くてもいいんじゃない?」と強く思っています。前の会社でも無かったし、今の会社でも最初の2年くらいは正直言って全然無かった。でも、がむしゃらにやってみると見えてくることってたくさんあって、今は明確にビジョンを持っています。なので、動いてから見つけるのでも全然遅くはないと思います。
李:事業の方針に関しては、頻繁に揉めています。例えば、私の場合、アーリーステージの時期に関しては、「選択と集中」の考え方で狭い領域をまずは攻めるべきだと考えているのですが、社長は壮大なビジョンを持っていて、このタイミングで「海外行くでぇ」とか言ったりしていてですね、それで揉めることは多いです。直して欲しいことは、「常識人」の目線を持って欲しいところですかね。ただ、「常識人」になってしまうと、彼の「良さ」が無くなってしまうし、それこそ「一般人」になってしまう。それはそれで良くないですし、難しいところですね。会場の皆さんへのアドバイスについては、「今、自分が取り組んでいる仕事を来年の今頃もワクワクしてやれますか?」ということを毎日問い直して日々の仕事に取り組んで頂きたいですね。
阿久澤:来年の今頃を考えて、ワクワクしなくなったら、次のことを考え始めても良いのではないかということですかね。
李:そうですね。
東後:私も、意見が食い違うことはありますが、揉めたことは特にないですね。直して欲しいところも、根本的にはないです。ただ、たまに「信じ込む力」が強すぎて、困る時はありますね。会場の皆さんへのアドバイスですが、「チャレンジするなら早い方が良い」ということですね。今の環境で楽しいなと思っている人ほどチャレンジして欲しいなと思います。中長期的なキャリアを考えても、早いステージでチャレンジするのが良いと思います。私がfreee株式会社に参画したのも、シードラウンドが終わったくらいの時期でした。「チャレンジするための切符には有効期限がある」ということもしっかりと理解しておくべきかと思います。「悩むなら、早い段階でチャレンジすべきではないのか」と言うのが私の勝手な意見です。
関:そうですね。私も揉めたことは特にないですが、最近、社長がスーツを着用し始めたりして、「常識人」になりつつあるのが懸念点と言えば懸念点です(会場笑)。ちゃんと「外れ値」をつくって欲しいですね。逆に、「常識的」になっているなら、それは「右腕」である私がサボっているということなのかもしれません。そこはちゃんとやらないなといけないなと思います。会場の皆さんへのアドバイスですが、登壇者の皆さんのアドバイスに付け加えるなら、外部環境の変化をしっかりと見極めながら、キャリア設計について考えて欲しいなと思っています。
最後に
今回の講演レポートは以上となる。本講演を主催した株式会社ペイミーでは、今後も「Paymeナイト」と題して、定期的なイベントを開催していく予定とのこと。次回以降、参加を検討する場合は、Peatixのイベントページをフォローすると良いだろう。
執筆者:勝木健太
1986年生まれ。幼少期7年間をシンガポールで過ごす。京都大学工学部電気電子工学科を卒業後、新卒で三菱UFJ銀行に入行。4年間の勤務後、PwCコンサルティング、有限責任監査法人トーマツを経て、フリーランスの経営コンサルタントとして独立。大手消費財メーカー向けの新規事業/デジタルマーケティング関連のプロジェクトに参画した後、大手企業のデジタル変革に向けた事業戦略の策定・実行支援に取り組むべく、株式会社And Technologiesを創業。執筆協力実績として、『未来市場 2019-2028(日経BP社)』『ブロックチェーン・レボリューション(ダイヤモンド社)』、寄稿実績として、『キャリアハック』『Forbes JAPAN』『ダイヤモンド・オンライン』『BUSINESS INSIDER JAPAN』『ITmedia』等がある。Facebookアカウントはこちら / Twitterアカウントはこちら。